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a630 決断ができない


数年後、学が35歳になったころ、母親から嫁探し、お見合いの相手を見つけて
ほしいと頼まれた。
友人のためと思い、あちこちに声をかけ、2度も見合いをさせたが成立しなかっ
た。
相手はなんの非の打ちどころもない。すばらしい女性で、成立しないということ
はおかしい。
本人を捕まえ、とことん本音を聞いてみるとびっくりした。
女は、自分の背負っている金、財産が目当てだ。そんな女に子供ができ、子供に
まで財産を持っていかれるかと思うと、どうしても決断ができない、という。
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a629 貧しい心


とうとう女房が、初めての子を流産してしまった。勿論、住人は流産したことを
知っているが、優しい言葉をかけるわけでもない。
貧乏人など子供を作る資格がない、と言わんばかりに輪をかけて自分たちの争い
事を管理人に押し付けてくる。
お金があれば、心豊かに周りに温かい目、優しい言葉がかけられるものだと思っ
たが全く逆だ。
金持ちは、人間としての情が金に奪われてしまうものだ、としみじみ感じた。
その後、妊娠をしたので出る決心をし、アパート生活に戻った。
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a628 管理人


有名な銀座の老舗の息子夫婦だとか、新宿の高級クラブのママさんだとか、1応、
自他共に金持ちと認じる人ばかりである。
そういう人達から見ると、明らかに若くて、家賃のでない、マンションの管理人
をやってる人間なんぞ、見下げた貧乏人に見えたのだろう。
隣人同士のいざこざ、上下階のいざこざ、トイレが詰まっても、管理人の責任だ
とか、やたらめったら無理難題を押し付けてくる。
下の階からの焼き肉の匂いを、あれは我が家に対するあてつけだ。なんとかしろ、
と言ってくる。
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a627 共稼ぎ


ボーナスが入ったら、洗濯機を買おう、その次は、冷蔵庫、テレビと、夫婦で夢
を描き、必死で働いていた折、学が、自由が丘に五階建ての賃貸しマンション
建てたので、管理人をしてくれないか、との話。
家賃はただでいい、との話だったので、これ幸い飛びついた。
ただほど高くつくものはない。この管理人の仕事。とんでもない結果を生むこと
になる。
当時マンションという言葉は、聞き慣れない言葉で、走りだったのである。
もちろん家賃も高かったので、入居者はハイクラスの人ばかりだ。
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a626 20歳で20億円相続?


ちなみに本家の姪たちは、20歳前だと言うのに二十億もの資産をもらい、渋谷
駅近くに億ションを購入。優雅に遊び呆けているとのことだ。
ひかるの新婚生活は、女房の実家にも反対され、それこそ三畳一間、電化製品ひ
とつない。貧乏どん底からのスタートであった。
木造で、歩くとミシミシ音がし、トイレはポットン便所の安アパート夫婦で共
働き、やっと家賃が払えるという生活だ。
勿論ひかるは、テレビの世界で仕事をしていたが、当時は白黒放送で、給料など、
1般の企業の社員に比べられない、どん底生活であった。
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a625 貯木


母親は、上品な女性で、何人かのお手伝いを雇い、家の中や庭など、きれいに作
り上げていた。
なんでそのように、金があるのかと聞くと、学の祖父は次男ではあったが、長男
を手伝い、その昔造園業をやっていたという。
貯木のため、原っぱだった土地をかなり持っていたので、兄貴に分けてもらった
とのことだ。
その土地はあれよあれよという間に値上がりし、手がつけられないほどの大金が
転がり込んできたという。
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a624 百科事典


家の中へ入ると、そこにはまた、青い眼をした、ペルシャ猫だとかなんとか言っ
ていたが、これまた血統書付の高級な猫だというのが3匹ほど、母親が可愛がっ
ていた。
家のなかの家具や調度品は見たこともない、皇族のお宅ではないかと思われるよ
うなしつらえだ。
泊まっていくようにと勧められ、泊まった。そこには全く見たこともない、その
ために作らせたのかと、思われるような本棚があり、そこには、とんでもない百
科事典等が、びっしり収まっている。
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a623 血統犬


外国製のカマロだとかいう、わけのわからない外車を乗り回していた。
日本の車は、ドアを閉めたときの音が軽すぎる、といって、重厚なドアの音のす
る外車を次から次と乗り回していたのである。
親父を早くに亡くしており、母と2人の生活だ。
邸宅へ誘われていったが、屋敷の前には、外車を収納できる車庫があり、門の横
には、鉄格子で囲った、立派な犬小屋だ。
ひかるの生活、犬以下だ。
この犬がまたデッカイ、3匹もおり、人間なぞひと噛みで殺しそうで、それこそ
血統書付のいい犬だという。
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a622 新婚生活をスタート


悔しくても、侮辱されても、頭を下げ続けたが、結果的に、許してもらえなかっ
た。
彼女が、親兄弟、親戚含め、すべて縁を切る、1緒になろうと言ってくれたとき
は、涙が止まらなかった。
ひかるは一生、彼女を路頭に迷わす事はすまい、と心に誓って、新婚生活をス
タートさせた。
新婚当時、女房の友達を含め7、8人の仲間で、同年代とあってよく飲み食いを
した。
その中に1人、独身の中山学がいた。
学はとんでもない男で、十数億もの資産を持ち、自由が丘の邸宅住まいだ。
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a621 怒り


ひかるも生まれて初めて他人さまに馬鹿にされ、コケにされる屈辱感は味わった
ことがない。
当時、沖縄生まれでパスポートを持っている。自分でも劣等感は感じていたが、
それをもろに罵られると、人間の感情は火に油を注ぐようなものだ。
こんな人間、生きている価値がない・・ぶっ殺してしまえ!
それくらい憤りを感じた。
しかしふるさとで、今日もヘラで草取りに汗を流し、爪に火をともして生きる
親の事を考えると、息子が東京へ出て殺人を犯した、なんて白い目で周りから見
られて生きるのは、あまりにも酷だ。
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a620 地図にない島


結婚の約束をし、相手の親のところへ挨拶に行くと、猛反対だ。
当時、沖縄は日本国ではない。米国統治下で、パスポートを持っており、まして
やひかるの生まれ育った島など、日本の地図には載っていない、
彼女の実家は、代々手広く商売をしており、嘘かまことかは分からないが、皇族
にもつながる由緒ある家だと言っていた。
そんな家柄が、ひかるみたいな見た目も格好も、田舎者。ましてや、沖縄となる
と、反対するのは当然だ。
座布団を投げつけられ、しまいには、塩をまかれるありさまだ。
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a619 着のみ着のまま


ひかるの息子は34才、子会社、下請会社を使いこなしバリバリ働いている。
今の時代は、どうだの、こうだのと、親父に説教するくらいのバリバリ、毎日が
充実しているようだ。
軽い男に言い聞かせる気などさらさらないが、つい経験した犬の糞物語を話して
やった。
ひかるは高校卒業と同時に、周囲12キロ海抜12メータという、日本の南端の小
さな島から、着のみ着のままで上京した。
昼間は必死で働き、夜学の後テレビ界へ就職した。
その時知り合った東京生まれの東京育ち、江戸っ子の彼女と出会うことができた。
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a618 同居


東京の文京区に親と同居しており、どうも生活するのには困らないようだ。
文京区あたりは東京のど真ん中で、そこに親の代から生活しているということは、
土地なり資産があるだろう。
当然あくせく働く必要もなく、十分食べるくらいの収入があるだろう。
が、しかし男として考えると軽すぎる。
ティッシュペーパーがふらふらしているようなもので、ちょっと風が吹けば舞い
上がり、己をコントロールできないような、あまりにも軽い幼い感じすら受ける
のである。
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a617 軽すぎる


歳をとると、セックスの数が追いつかず、なかなか仲直りできない、というと、
おじさんのいうことは的を得ていると、おおはしゃぎだ。
世間話をしていると、同じ民宿の泊まり客、男が2人、話につられ、ぶらりと入
ってきた。
いちばん年上だと思われる、32,3歳くらいの男の言動が、どうも気になる。
自分は、1度も仕事をしたことがないし、フリーターであることを自慢している。
態度や言動から見ても、どうも軽すぎる。
スタイル、格好そのものは、普通の十人並みだが、男として、結婚をしようとか、
そういう感覚は全くないようだ。
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a616 年間半々生活


南の島の夜は開放的だ。
食事を済ませ、8時過ぎ、庭のテーブルで、泡盛を飲んでいると、民宿の20代
半ばのカップルが2組散策がてら、ぶらりと入ってきた。
東京と島を年間半々生活してるわたしを見て、うらやましい。自分の両親にもそ
のような生活をしてもらいたいと、話していた。
親父は定年になるの楽しみにしていたが、いざ定年になると、朝から晩まで夫婦
角突き合わせで、些細なことで、口争いが絶えないという。
若いうちは、朝昼晩喧嘩するが、朝昼晩セックスをすれば、仲直りができる。
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